刻一刻と自動運転レベル3の法整備が進められています。
2020年4月から特定整備制度が施行されると同時に、道路交通法でも高速道路だけと限定はされましたがレベル3の自動運転の車両が走行できるようになりました。
これによりますますこれからの自動車整備業界は運転支援に使用されるレーザーやレーダー、カメラなどのエーミング学習は必須事項になります。
それでもまだまだエーミング学習についての情報は少ないのが現状です。
今回は前回のフォワードレコグニッションカメラのエーミング作業方法に続き、ミリ波レーダーとクリアランスソナーの学習、再設定の作業方法についてご説明いたします。
フォワードレコグニッションカメラのエーミング方法については下のリンクからどうぞ
ミリ波レーダーの調整方法
ミリ波レーダー(ミリメーターウェーブレーダーセンサ)の代表的なシステムといえばクルーズコントロールでしょう。
高速道路で使用すると本当にストレス軽減ですよね。
フロントバンパーを脱着や交換をした場合、このミリ波レーダーの再調整を行わないといけない車両があります。
センサーAssyさえ触らなければ調整までしなくてもいいのですが、フロント事故などでセンサーを交換しているのであれば必須項目になりますし、保険会社との見積もり時には必ず入れましょう。
1 ミリ波レーダー調整の作業前準備
フォワードレコグニッションカメラのエーミング学習時と同じで
- タイヤ空気圧を正規に調整
- ラジエータグリルエンブレム表面の汚れを落とす
上記は、どのエーミング調整でも必須ですね。
後は、著しくフロント部が変形していると車両中心線がずれてしまいますので、調整をする際には修理をしてからにしましょう。
2 作業場の確保と水平確認
今回は50系プリウスの場合でご説明します。
ミリ波レーダー調整ですので、金属物は置かないようにしましょう。
斜線の2メートル以内ですと高さ5センチ以下の金属物は調整に影響しませんが、なるべく置かないようにしましょう。
3 SST(スタンド及びリフレクター)
ミリ波レーダーの調整にはリフレクターが必ず必要になります。
ご自身で作成しても問題ありませんし、いろんな会社からリフレクターとスタンドは販売されていますが、ただの垂直な棒と三角のリフレクターです。
手っ取り早くトヨタもしくは部品商などからトヨタのSST(スタンド及びリフレクター)を購入した方が間違いありません。
高さは参考値です。
リフレクターの中心がミリ波レーダーセンサの中止と合うようにしてください。
4 スタンド及びリフレクター設置位置
上記の図で割り出したAとBを結び車両中心線を出します。
Bの位置から3000mm前方がスタンドの位置になります。
5 スキャンツールにてレーダーの光軸調整
[ボデー]→[プリクラッシュ2]→[作業サポート]→[前方レーダー光軸調整]の順に選択します。後は[前方レーダー光軸調整]でOKです。
スキャンツールにて光軸調整をする際に注意すること
- すべてのドアを閉める
- 車両には乗車しない
- 車両を動かさない
- 調整エリアに侵入しない
クリアランスソナーの測定方法
続いて50系プリウスのクリアランスソナーの測定方法になります。
このセンサーの役割は障害物の感知になります。
精度が上がったことにより、アクセルとブレーキの踏み間違いによる誤発進防止の役割を担ったり
ドアミラーでは見えない死角からの車両接近に対応したブラインドスポットモニターなどの役割を担っています。
これらのシステム誤作動を防止するためにもバンパーやサスペンションの交換や脱着した場合にはクリアランスソナーの角度測定、登録は必須作業になります。
1 測定場所の路面角度の確認
どのエーミング作業も水平な場所は必須になります。
クリアランスソナーの測定・登録に関しては、水平確認は角度計を使用します。
なので水平器を使って角度計のゼロ点を記憶させることが必要になります。
水平器で水平な場所を確認したら、角度計をゼロ点を記憶させます。
※角度計のゼロ点を記憶させる際は水平器の向きと同じ向きで行います。
そこまでズレることはないですが一応念のために向きは揃えておきましょう。
上図の斜線8か所の角度を測ります。
A・C・F・Hに関しては範囲の中ではればどこで測定しても構いません。
この計算用シートを使用してフロント側とリア側の角度の平均値を算出します。
平均値が0.37度を超える場合とフロントとリアで0.2度以上差がある場合は測定場所を変えましょう。
2 角度計のゼロ点記憶
上記の測定場所の路面角度の確認で割り出したフロントとリアの平均角度を更に平均します。
その平均角度値が0.1度であれば0.1度に角度計を傾けて角度計のゼロ点を記憶してください。
ゼロ点を記憶した角度計にセンサーアタッチメントを取り付け、傷防止のマスキングテープを巻いてください。
これで角度計の準備は完了です。
※ICSセンサー用アタッチメントは、どこのメーカーのものでも大丈夫です。
各メーカーの部販で販売しています。
スズキのSSTのICSセンサーアタッチメントが一番値段が安かったです。
※マスキングテープはあくまで傷防止ですので巻いても巻かなくてもどちらでも構いません。
3 クリアランスソナーの高さ測定
測定場所が確保と角度計のゼロ点記憶ができましたら、いよいよソナーの測定になります。
まずはセンサーの高さを基準値内に合わせましょう
※上記は50系プリウスの基準値になります。
センサーの高さが車種によって変わってきますし、空気圧や積載物などで変わってきます。
基準値に高さを合わせてからソナーの測定をしましょう。
4 センサー角度を測定
測定の仕方はとても簡単でセンサーにアタッチメントの先端を合わせるだけです。
測定面とアタッチメントはしっかり垂直になるように測定してください。
角度計で測定した数値から90度を引くことを忘れないでくださいね。
その数値がセンサーの角度値になります。
上記は50系プリウスの基準値になります。
基準値内であれば問題ありません。
万が一基準値外ですとバンパーの取付けやセンサーの取付けを再確認してください。
5 スキャンツールによる登録設定
角度値が基準値内であればスキャンツールにて登録して完了です。
[ボデー]→[IPA/ICS/クリアランスソナー]→[作業サポート]→[クリアランスソナー検知/ステアリング調整]の順で実行です。
後は自動調整してくれます。
※クリアランスウォーニングコンピュータAssyを交換したのであれば
バンパー情報と測定した各センサーの角度値を入力しなければなりません
まとめ
今回ご紹介したエーミング作業は、整備事業所で一般的に作業されるバンパー交換や脱着した際に必要になるエーミングになります。
ですので必要になるSSTや器具などは必ず用意していきましょう。
どれも各メーカーの部販や部品商会なで注文できるものですし比較的安価です。
作業に慣れてきたら効率的に作業を行えるように試行錯誤しながら必要なものを揃えていけばいいでしょう。
まずはエーミング作業に慣れていきましょう。